より速く、より美しく、そしてより忠実に。これがプリンターの開発にあたりエプソンが掲げてきた重要なテーマだ。しかし、こうした機能面のテーマと同様 に重要なテーマがエプソンにはある。それは「環境性能は商品の品質の一部」ということ。企画・設計から原材料・部品調達、製造、物流、使用、回収・リサイ クルまでの流れのなかで環境に対する負荷をいかに低減しているか、ということまでも含めてが商品の品質であるという考え方だ。つまり機能面で優れていて も、環境に配慮していなければ、その商品の品質は悪いという考え方。それは脈々と「カラリオ」にも流れている。



3つの基本方針
《省エネ、省資源、有害物質の排除》


 エプソンが商品の開発に際して重視するポイントは3つ。それは省エネ設計、省資源、有害物質の排除だ。この3つのポイントについて具体的な目標を定めて 商品化するために、エプソンエコロジーラベル制度を導入している。これは、エプソンが自ら環境調和型商品の基準を定め、その基準達成を目指して商品開発を 進める制度である。基準は全社共通基準と商品ジャンル毎に定める事業部基準で構成されている。

エプソンエコロジーラベルの全社共通基準
省エネルギー(商品使用時の省エネ)、省資源、有害物質の排除---について商品のライ フサイクルを配慮し、自社既存機種に対して、また業界内において優位性のある目標を定めて実現する。
以下に示す項目を満たしている。
  • 稼動時と待機時の電力消費を削減する。
  • セイコーエプソンが定める含有禁止化学物質を含有しない。
  • 25g以上のプラスチック部品へ材質名を表示する。
  • 小型二次電池へ必要な表示を行い、電池の取り外しが容易な構造とする。
  • 容器包装リサイクル法及びEU包装廃棄物政令の対象となる梱包材に対し、必要な識別表示をする。
  • 梱包材プラスチック部品へ材質名を表示する。
  • 梱包材への特定重金属の含有を100ppm未満とする。
  • 製品アセスメントを実施している。


     あわせて環境保全に役立つと認められる商品に貼付が許される日本環境協会が実施しているエコマーク事業にも積極的に取り組んでおり、すでにカラリオ8機 種、用紙などプリンター消耗品類で取得している。

     また、2001年4月(一部1月)施行のグリーン購入法(国等による環境物品等の調達の推進等に関する法律)で定める「特定調達物品等」に該当するグリーン購入法適合商品も拡大している。


    《消耗品のリサイクルシステム》

     インクカートリッジやトナーカートリッジは資源。

     こういうと唐突のようだが、インクカートリッジは回収後、PP材や高炉還元剤などとして96%が、トナーカートリッジは部品リユースやマテリアルリサイ クルなどにより実に100%が再利用されている。インクカートリッジやトナーカートリッジが資源だという理由がここにある。しかし、そうした大事な資源も 回収できなければごみとして処理されてしまう。



     そのためエプソンでは、インクカートリッジは販売店の店頭に設置した回収ポストで、トナーカートリッジについてはフリーダイヤルによる直接回収を実施し て、せっかくの資源をごみにしない努力をしている。すでに2300を超える店舗に回収ポストを設置しており、年々回収数は増加している。

     こうした回収リサイクル活動は、国内だけにとどまらず台湾、中国など海外でも実施している。


    《修理品の梱包・配送にも環境配慮を》

     ユーザー側で発生する廃棄物をゼロに近づけるため、商品の配送システムや梱包容器に配慮した「カスタマーゼロエミッション」活動も推進している。 2003年2月から北海道・札幌、東京・日野など全国7か所の修理拠点で環境対応型の梱包箱「e−Starpack」と配送をパックにした「環境デリバ リーパック」サービスを開始した。

     これは何度でも使用できる古紙100%を圧縮した再生素材の梱包箱を、修理を行ったプリンターの運送箱として使用し、ユーザーに商品を届けた後に箱だけ を再び持ち帰り、かよい箱として何度も再利用するという仕組み。

     商品は特殊フィルムにより梱包箱に固定する方式なので、内部緩衝材も不要となり、これまで約10分かかっていた梱包作業時間が数十秒に短縮した。また、 梱包資材コストを従来比で約55%削減、梱包資材量は三分の一に削減できた。

     「環境負荷を低減した製品こそが最高の品質をもつ」という考え方。企業の環境に対する取り組み姿勢が問われるようになって久しいが、ものづくりの観点に たって、着実に一歩ずつその考えを具現化していく姿勢こそが、21世紀型環境企業といえるのかもしれない。

    終わり


     




    産経Webに掲載されている記事・写真の無断転載を禁じます。
    (産業経済新聞社・産經・サンケイ)Copyright2003,TheSankeiShimbun