1.ピエゾヘッドとインクカートリッジ
インクサイズをコントロール
<あらゆる階調を表現…MSDT>
新「カラリオ」の特徴のひとつは、豊かな階調表現が可能になったこと。階調を表現するためには、どこまで小さく、どれだけ複数の異なるインクサイズの
ドットを作り出せるのかがポイント。セイコーエプソンでは、この難問に対する答えとして、電気を流すと変形する素子の働きによってインクを紙に飛ばすピエ
ゾ方式の能力を最大限に引き出すことで克服した。
《複数のインクサイズで最高画質を実現》
階調を比較する場合、ある面積のなかにインクドットでどれくらいの情報量を詰め込めるかというのがひとつの基準となる。つまり狭い面
積のなかにどれだけ
小さなインクを打ち込めるか、さらに大きさの異なるインクをどれだけ多く飛ばせるかが課題だった。それを追求するために生み出されたのが、ひとつのヘッド
から複数のインクサイズを吐出できるMSDT(マルチ・サイズ・ドット・テクノロジー)と呼ばれる技術。MSDTの開発によりピエゾヘッドから生み出され
るインクサイズは、1.5ピコ(1ピコは1兆分の1)リットル、3ピコリットル、7ピコリットルの3つのサイズを組み合わせて高画質を生み出している。直
径20マイクロ(1マイクロは100万分の1)メートルのノズル孔から、どうしてさまざまな大きさのインクが飛ばせるのか。
そこで登場するのがメニスカスコントロール、つまりノズル孔のインク液の表面を制御する技術だ。
ピエゾヘッドでは、素子に流す電流を微妙に制御することで、ノズル先端のインクを振動させている。その振動のため液表面はノズルの先
端で盛り上がった
り、内側に引っ込んだりを絶えず繰り返している。液面が盛り上がった瞬間に、うち側に急激に引っ張るとノズルから盛り上がっていたインク液がちぎれ飛び、
紙に印刷する。インクが吐出された後に、またこの液面の盛り上がりと引っ張りのタイミングをピエゾ素子によって最適化することで、ノズル孔の大きさに関係
なく、大小異なるサイズのインクをとばすことができるようになる。引き込みが大きければ大きいほど小さいインクが、逆に引き込みが小さいと大きいインクが
得られる。新「カラリオ」の高画質は、こうした技術から生まれている。
《ヘッドとカートリッジとは車の両輪》
【フォームタイプのインクカートリッジ】
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【エプソンのインクカートリッジ】
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フォームタイプは顔料粒子が下に溜まってしまう
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エプソンのインクカートリッジは顔料粒子が沈降しない
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インクヘッドから吐出されるインクの量は微量。とはいえ、そのわずかな量の消費をも感知してインクをちゃんとヘッドに補給できなければ、きれいな画質は
得られない。それを実現しているのがインクカートリッジだ。
「カラリオ」のインクは、顔料および染料ともすべて液体のまま。他社が採用しているスポンジに染み込ませてインクを保持するフォーム
方式とは異なり、何
の工夫もせずに本体に装着すれば、インクが下に流れ出す力が強すぎてヘッドからインクがあふれ出てしまう。また本体から外せば液もれしてしまう。
このためカートリッジのインク室とインクの流れる通路の間に、わずかな圧力で開閉するバルブ(EPSON Smart Valve
Control)を
設置した。このバルブにより、ヘッドで消費されたほんのわずかなインク量をも感知し、バルブが開いてインクを供給できるようになった。
さらにバルブの開閉をサポートするコイル状のばねを用いて、プリンターが作動していない時の密閉性を向上させている。こうして顔料の
沈降の影響を受けにくくし、高速にも対応可能なインク供給が可能となった。
インクヘッドとインクカートリッジは、一見まったく異なる働きをしているように見えるが、互いが揃ってこそ機能を発揮できる、まさに
車の両輪のようなものといえる。
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